ずのりんご日記

関西弁の奴です。

ブチギレ退社をキメるまで~前編~

こんにちは。

新年あけてからギャンブルしてないのに金欠、りんごです。

ああ物語セカンドのパチ打ちてえ。

 

 

失礼。

タイトル通り退社するまでの、ブラック企業 最後のお話です。

まずは簡単に店舗の闇をおさらいしましょう。

 

  • エリア長が直々に頼みこんでくるから断れず、バイトでも平気で10時間労働させるよ
  • パートさんよりも仕事量が多い
  • 店員ではなく、ひとりの女性んごとして見てくる「クソ客」と呼ばれる男が計7人いる
  • 治安が悪いので客層も比例して悪い

 

やばいよね。信じられないよね。

これもうパンドラの箱がどうのこうのだよね。

前回の記事でも申し上げた通り、まあ激務なんです。

そして事件が起きたのは10月28日。

 

以下、回想

 

ハロウィンが近く来店した子どもたちにうまい棒を配っていました。

制服の上着を着ようか、半袖の下に長袖のインナーを着ようか、入口のドアが無く風が吹きさらしになっているこの店をどう攻略しようか悩んでいながら、その日もリストアップと商品補充が終わらず。

ぼくの休憩中、パートさんA・Bは恒例のようにレジ2つを陣取り、本来やるべき業務を放置して世間話。

呆れさえ感じるお昼すぎでした。

 

長時間労働もいよいよ終盤、帰ったら何をしようか考えないと心に余裕がありません。

パートさんA・Bはバックヤードでの作業があるため、ぼくをひとり店頭に残していきました。

店舗ではレジに3、4人並んだら他の店員を呼ぶルールがありますが、ぼくはよほどのことが無い限り呼んでいませんでした。バックヤードにいるなら尚更。

会社の社員さん含め誰も信用していなかったからです。

作業の詳細は教えてもらえませんでしたが、時間がかかるみたいだったのでとりあえず了承しました。

 

突然、ひとりの男が現れ、ぼくは目を引きます。

感染症の流行を物ともしないノーマスク、空いた四合瓶、明らかな酒の臭い。男の持っているキャリーバッグと杖ですら禍々しい。

 

えびせんを持ってレジにやってきました。

しかしぼくはプロです。お金をもらっている身なので完璧に対応するのが筋です。

 

「お会計185円でございます」

男はもたもたし始めます。子どもや主婦さんも後ろに並んできました。

 

「小銭を出すのに時間がかかるから、後ろのお客さんを先にしたってくれ」

 

そう言い男は、ぼくが対応していたメインレジから、隣のサブレジへ移動しました。

男の会計データを保存してから、後ろにいたお客さんを案内します。

客層が悪いとはいえいい人もいます。難なく会計を済ませ、サブレジを見ました。

 

金銭は全てトレーに置いてからお渡ししています。

手から手へ直接受け取るのが汚く感じ、さらに相手がクソ客だった場合は手を握られる可能性があったからです。

 

サブレジのトレーには、小銭が置かれていません。

なのでぼくは並んでいた小さな女の子と、そのお父さんを案内します。

 

「お次お並びの方どうぞ、お待たせいたしました」

その時でした。

 

 

「ひとりだけやから。並んでる全員待つとは言ってないよ」

チー牛顔負けの笑みはあまりにも不気味で背筋が凍ります。

しかしぼくはプロです。お金をもらっている身なので完璧に対応するのが筋です。

 

「すみません、少々お待ちください」

 

親子に謝り、男のいるサブレジへ移動。トレーではなくカゴを置くところに堂々と置かれた小銭を取り、レシートを渡しました。これで男は帰るはず。

 

 

そいつは、怒鳴りながら持っていた杖でレジ台を叩き始めたのです。

 

突然の奇行に驚くお客さんたち。涙目になってお父さんに抱き着く女の子。

一気に店中が張りつめた空気になり、ぼくは咄嗟に酒の瓶へ目がいきました。もしこの瓶を振り回したら?いやお客さんたちに危害があったら?

 

 

今並んでいるお客さんたちを、一刻も早く避難させないと

 

男は会計も終わり、あとは店から出ていくだけなのに。頑なに帰ろうとしません。

そこからの接客は冷静かつ迅速でした。

 

なるだけ速く。そして丁寧に。

女の子には優しく、怖がらせないように。ハロウィンのお菓子も忘れずに。

ぼくのせいじゃないけどみんなを怖がらせた謝罪も入れて。

 

自分の怒鳴り声でまた怒りが増してくる心理のように、杖で台を強く、強く叩きます。

やっと全員の避難(接客)が完了します。

 

問題は別のコーナーでお菓子を見ていた、男子高校生たちでした。

あまりにも信じがたい光景に「うるさいなあ」とひそひそ話。そいつの耳にも聞こえてしまったのです。

 

「喧嘩か!何人でもかかってこい、ここではお姉さんに迷惑やから公園まで来たら相手したるわ」

 

 

 

もう迷惑メーターはカンストなのでとっとと帰ってください!!!

 

今度は高校生たちにヘイトが向き、そちらへ攻撃を始めます。

店の前には公園がありますが、そこも子どもたちでいっぱいなのでどちらにせよ迷惑です。しかし令和の高校生はうまくスルーしてくれます。害悪には相手をせず、「何あの人」くらいの感覚で20円のチョコレートをかごに入れて談笑しています。

 

でもぼくは用意周到なので、持っていたボールペンでレシートの裏に

”これ以上続くようなら警察を呼ぶけどどうしよう?”

と書いたメモを、商品補充を装い渡そうと動き始めていました。

 

10~15分ほど男はサブレジにいたでしょうか。

ひとしきり文句と罵声を叫んだ後、満足したのか帰っていきました。

メモは書かずじまいです。

 

ありがとう高校生たちよ!!!

ぼくは周囲の安全を確認し、高校生たちの元へ。

 

「ごめんね迷惑かけて、怖かったよね?まだ叫んでるのやめなかったら警察呼ぼうか?って訊きに行こうとしてて…ほんまにごめん」

 

「いや全然大丈夫っす!!お姉さん優しいっすね」

 

 

天使じゃん…

ぼく、間違ってなかったのか。

接客業として100点だったかもしれない。

 

高校生たちもたくさんお菓子を買ってくれて、店には平和が戻りました。

ただ、そこで本当に間違ってなかったのはぼくだけだったのです。

 

To be continue...